若い頃のちょっと恥ずかしい思い出

私が生まれた七滝(ななたき)という村は熊本県上益城郡御船町にあります。とにかく山の中にあり、道はと言えば坂道ばかりでした。
よって自転車を見かけることはほとんどありませんでした。
近所や友達の家はもちろん、我が家にもあるわけがなく6年生まで乗れないまま大きくなりました。

ある日、同じ村に引っ越してきた子がなんと自転車をもっているではありませんか!
私はすぐにその子と仲良くなりました。
自転車を借りるためにです。
友達は気前よく、すぐに貸してくれました。
ある日曜日、私は一人で自転車乗りをマスターしたのです。
しかし自転車など買ってもらえるわけもなく、大人になるまでただ乗れるだけのものとして存在していました。

結婚してすぐ熊本市八王寺の県営住宅に住んでいた私は、3キロほど離れた大学病院に入院している友達を見舞うために、思い切って隣の奥さんから自転車を借りることにしました。

自信はなかったのですが、平たい広い道です。
ドキドキしながら乗ってみました。楽勝です。スイスイ進みます。

しかしうっかり車道を走っていた私は車のクラクションにびっくり。自転車を歩道に入れようとしたまま斜めにザザーッと滑ってしまったのです。

ちょうどガソリンスタンドの前で店長さんの話を社員さんたちが道の方を向いて聞いていました。
サッと立ち去れば良かったのですが、なんとメガネが吹っ飛び見つからないのです。

這いつくばってメガネを探している私をみかねてみんなで探してくれました。
何度もお礼を言って病院に着いた私は30分もしたころ、空の雲行きがあやしいことに気がつきました。
慌てて自転車をこぎ始めたすぐそのあと、大粒の雨が降り出しました。

帰り道も同じです。
私は朝のガソリンスタンドの前を誰もいませんようにと、祈る気持ちで通り過ぎようとしたのですが、なんとお客様のお見送りで全員がまた道の方を向いているではありませんか?!

恥ずかしさで消えたくなる気持ちを抑えて見ないふりをして通り過ぎました。
ほとんど乗れるかも分からない自転車に乗った罰でしょうか?
いいえもう乗るなとの戒めでしょうか?
自転車と泳ぎは一度できたら一生忘れないと言います。
でも私はあれ以来自転車には乗っていません。

スタンドのお兄ちゃんに笑える1日をプレゼントしたと、自分を納得させた1日でした。

本日もお読みいただいてありがとうございました。

感謝